『その裁きは死』アンソニー・ホロヴィッツ

『その裁きは死』を読む。 ホーソーン・シリーズの第2弾。今作も面白かった。 事件自体は、殺人現場に謎の数字がペンキで描き残されていたことを除けば比較的地味でありふれた殺人事件だ。しかしなぜか物語に引き込まれていくのは、一つには作者ホロヴィッツ…

『読書嫌いのための図書室案内』青谷真未

『読書嫌いのための図書室案内 』を読む。 高校を舞台にした日常ミステリ。内容はタイトルそのままに、読書嫌いの主人公がひょんなことから「図書新聞」の復刊をすることになるという話。その図書新聞の原稿を集める間に遭遇するちょっとした不可解な出来事…

『人生の勝算』前田裕二

『人生の勝算 』を読む。 前に読んだ『メモの魔力 -The Magic of Memos-』のメモ術とは異なり、成功者前田裕二の今までの半自伝的に加え、成功者の自慢話的な印象が強かった。 後半はそれでもSHOWROOMの立ち上げ時の失敗なども書かれているのだが、特に前半…

『地下世界をめぐる冒険――闇に隠された人類史』ウィル・ハント

『地下世界をめぐる冒険――闇に隠された人類史』を読む。 都市にあるトンネルや地下道、あるいは古い時代から自然に存在する洞窟、そういった数々の地下世界の探検に魅せられた男の地下世界探究の記録。 使われていない地下道などと聞けば興味が沸くが、実際…

『女帝 小池百合子』石井妙子

『女帝 小池百合子 』を読む。 小池百合子の生い立ちから現在までを取材し、彼女の本質が何かを明らかにしようとする。 冒頭、自分を特定されないようにしほしいと訴える人物のことが書かれる。本書の中で知られざる小池百合子の過去を多く語る、カイロ時代…

『スワン』呉勝浩

『スワン』を読む。 元々興味を持ったのは杉江松恋さんが紹介していたからだが、1年くらい前でどんな風に紹介していたのか全く記憶に残ってなかった。『スワン』というタイトルだけでは内容が想像できないので、あえて元の紹介記事とか確認せず読み始める。 …

『美しき愚かものたちのタブロー』原田マハ

『美しき愚かものたちのタブロー』を読む。 久しぶりの原田マハ作品。松方コレクションと国立西洋美術館の成立の背景を描く史実に基づくフィクション。さすが美術テーマの原田マハ作品は読み応えある。 主人公の田代雄一はモデルは存在するが架空…

『 1ミリの後悔もない、はずがない』一木けい

『1ミリの後悔もない、はずがない』を読む。 「椎名林檎絶賛」の広告を見て興味を持ったのだが、読んでなるほどと納得。椎名林檎の初期の作品に出てくる女の子たちーー例えば「歌舞伎町の女王」の女の子とかーーの人生はこんな感じだったのか…

『罪人の選択』貴志祐介

『罪人の選択』を読む。 4編収められた作品集。てっきりミステリだと思って読み始めたら最初の「夜の記憶」はSF。未来を舞台にしたというだけではない本格指向。次の「呪文」もやはり本格指向に加えてホラー風味のSF。3つめの表題作のみミステリ。戦時中から…

『崩壊学』

『崩壊学: 人類が直面している脅威の実態』を読む。 エネルギー問題、異常気象、金融危機、絶滅危惧種、様々な問題について書かれた警告の書。コロナ禍前の著作だが、疫病についても書かれている。 問題があることはわかっているけど緊急の課題て…

パトリシア・ハイスミスの執筆前の習慣

ハイスミスはまた、執筆を始める前に強い酒を飲む習慣があった。ウィルソンによると、それは「元気を出すためではなく、躁状態といえるほど高まったエネルギーを抑制するため」だった。晩年には毎日、大量の酒を飲むようになっていたが、アルコールには強か…

蜂は好きかい

「蜂は好きかい?」 「好きかどうか考えたことない」 「考えた方がいい。アインシュタインは蜂がいなくなったら人類は4年で絶滅すると言った」 「酸素がなくなったら人類は4分で絶滅してしまう。でも空気は好きにはならない」 「そうだな。ははは」 「ブリッ…

仕事をしたい人とすればいい

そんなある日のこと。前任者から引き継いだ執筆者に理不尽な怒られ方をして肩を落としていると、中原さんがいった。 「あなたが編集者なのだから、あなたが仕事をしたい人とすればいいのよ」 え、そうなのか、とびっくりした。雑誌はあくまでも編集者のもの…

女に向いている職業

P・D・ジェイムズに山口雅也がインタビューした話。 私はジェイムズ宅を訪れ、インタビューを試みたことがあるが、「イギリスはなぜ優れた女性ミステリ作家を多く輩出するのか?」という質問に対し、元々ジェーン・オースティンなどの女性作家の伝統があると…

長篇SFを書く秘訣

−−長篇SFを書く秘訣は? 「短篇のラストに”つづく”と書く」 『星新一 一〇〇一話をつくった人』(最相葉月 新潮社 p.320)星新一 一〇〇一話をつくった人作者:最相 葉月メディア: 単行本

寿命

「サブロー君、人は病気や事故で亡くなるんじゃないそうです。人は寿命で亡くなるそうです」 『いねむり先生』(伊集院静 集英社)p.198いねむり先生 (集英社文庫)作者:伊集院 静発売日: 2013/08/21メディア: 文庫

テレビゲーム

「テレビゲームというのも面白そうですね」 「なさるのですか」 「いや、したことはありませんが、あれでいろいろ工夫がいるらしいですね」 「一人で遊んで面白いんですかね」 「うん。遊びは一人遊びが基本でしょうが、あれは一人遊びじゃないのでしょう」 …

有益な情報を抽出するプロセス

有益な情報を抽出するためのプロセスは、コーヒー豆からコーヒーを作るのに似ている。まず、コーヒー豆を粉状にする作業(第一のプロセス)。次に、フィルターをかけ、お湯を注ぐ作業(第二のプロセス)。まったく異なる二つのプロセスを通す事によって、抽…

大型旅客機

一九七〇年代のはじめ、大型旅客機ボーイング727は運行を開始したばかりで、それは今日われわれが知っているような家畜運搬車ではなかった。 『遥かなる航跡』(リシャール・コラス 集英社文庫)p.81遥かなる航跡 (集英社文庫)作者:リシャール・コラス発…

就業規則

会社の就業規則というのはだいたいが過失をしないように書かれているものが多いから、守るのが面倒臭い。だから最大限に拡大解釈することがうまくやっていくコツでもある。今は知らないが、かつてのソニーの就業規則に”酒気を帯びて構内に入ってはならない”…

満場一致を是とするのは不純

かつて盛田は満場一致で議決されるものぐらい不純なものはないと言った。誰もが反対しないものは決して常識の域を出ないものだし、それを是とする人の動機は不純であると考えていた。 『ビジネスマンのための「個性」育成術』(黒木康夫 生活人新書 NHK出版…

戦争がなくならないのは

戦争がなくならないのは若者も年寄りもみんなそれが好きだからだ。戦った者も戦わなかった者も。 『ブラッド・メリディアン』(コーマック・マッカーシー 黒原敏行訳 早川書房)p.316ブラッド・メリディアン作者:コーマック・マッカーシー発売日: 2009/12/18…

痛み

レオは梯子を降りはじめた。梯子の横桟は氷のように冷たく、素手で握ると皮膚が鉄に貼りついた。一段降りるごとに皮が裂けはじめた。(中略)レオは歯を食いしばって痛みをこらえた。手のひらの皮のあちこちが裂けて血が出てきた。目からは涙が出た。下を見…

書いていて涙が止まりません。私は本物の作家ではないのです。本物の作家というのは泣いたりしません。 『通訳ダニエル・シュタイン』下(リュドミラ・ウリツカヤ 前田和泉訳 新潮社)p.313通訳ダニエル・シュタイン(上) (新潮クレスト・ブックス)作者:リュド…

人種

だが世の中には、被尋問者の言葉一つひとつの裏づけを取らなくては気がすまない人種もいれば、家に帰るとき、歩道の敷石の隙間を踏まないように歩かなくては気がすまない人種だっている。 『スリーピング・ドール』(ジェフリー・ディーヴァー 文藝春秋)p.3…

[日記] 傘の自動販売機

某駅前で傘の自動販売機を発見した。こんなものまで自動販売機で売ってるのか。

人生

それでも、自尊心を満足させることもできず、みじめさの中に生きているだけでも生きているといえるのかどうか。自分のしたことにはなんらかの目的があったとさえ思えない人生が、人生といえるのかどうか。 『チャイルド44 下』(トム・ロブ・スミス 新潮文庫…

動物と人間

病院のER(緊急救命室)の同僚が言うには、動物の意識には過去も未来もなく、あるのはただ現在だけだという。そして人間も熱い風呂に漬かりながらマティーニを五杯飲めば、それに近い状態になれるんだそうだ。つまりは土曜の夜の状態ってことだ。それ以外の…

世界は有限

世界は有限で思っているほど広くはない。誰でも六つのコネクション・リンクをたどれば、米国大統領にさえたどりつけるという話を聞いたことがある 『イノセント・ゲリラの祝祭』(海堂尊 宝島社)p.234新装版 イノセント・ゲリラの祝祭【電子特典付き】 (宝…

バカとアホ

無能には二通りある。害悪になる無能と、役に立つ無能さ。前者がバカで後者がアホ。 『イノセント・ゲリラの祝祭』(海堂尊 宝島社)p.224新装版 イノセント・ゲリラの祝祭【電子特典付き】 (宝島社文庫)作者:海堂尊発売日: 2019/05/31メディア: Kindle版