『地下世界をめぐる冒険――闇に隠された人類史』ウィル・ハント

地下世界をめぐる冒険――闇に隠された人類史』を読む。

  都市にあるトンネルや地下道、あるいは古い時代から自然に存在する洞窟、そういった数々の地下世界の探検に魅せられた男の地下世界探究の記録。

 使われていない地下道などと聞けば興味が沸くが、実際にそこを探検するとなると泥まみれになったり、時には法律を破らなければならないとなれば二の足を踏む。そんなところへも作者は足を運び、そこで経験したことを克明に記している。その体験の合間には、文化的・歴史的な解説やら、科学的な説明、ときには哲学者や科学者の言葉で補足し地下世界の魅力を掘り下げていく。

 少年時代に自宅近くのトンネルで地下世界に邂逅したことから始まり、ニューヨークの地下鉄のトンネル内の探索や、パリの街の端から端までを地下道だけで横断した話、霊的存在のいる洞窟の訪問、地下に穴を掘ることに魅入られた人々の話、パリの地下道で迷子になったこと、ピレネー山脈の洞窟に残された1万4千年前のバイソン(野牛)像、洞窟で2カ月過ごして人間本来のリズムを調べようとしたミッシェル・シフレの話と自らも洞窟で24時間過ごした時に得た体験など、9章にわたり語られる。

 地下世界の魅力に満ちた一冊だった。