『スワン』呉勝浩

 『スワン』を読む。

 元々興味を持ったのは杉江松恋さんが紹介していたからだが、1年くらい前でどんな風に紹介していたのか全く記憶に残ってなかった。『スワン』というタイトルだけでは内容が想像できないので、あえて元の紹介記事とか確認せず読み始める。

 カバーの見返し部分には「自分は被害者なのだと思っていた。だけど、そうじゃなかった。次はわたしだ。いつか、暴かれる--。」とある。そして扉を開いた本文の前に、建物の見取り図。ミステリだろうかと思う。

 何組かの登場人物が埼玉県のショッピングモールへと向かう話から始まり、そのショッピングモールの防災センターに所属する警備員たちのことも描かれ、いよいよミステリだなと思い始めるが、そのあとの展開はちょっと唖然とするくらいの急展開。突然の無差別連続殺人がショッピングモールで始まるのだ。そしてもっと驚くのは、わずか60ページ余りで凄惨な無差別連続殺人は犯人死亡とともに終わり、物語の舞台は半年後に移る。

 話はここからが本番だった。無差別連続殺人は犯人も明らかになり終わった事件だが、不可解なある出来事について知りたいという理由で、事件に巻き込まれながら生き延びた5人の人物が会合に呼び出される。事件の日、大量殺人の裏で何が起きていたのか、だんだんと明らかになっていく。

 誰が犯人か、あるいは動機や殺人方法(トリック)は何かを探偵が解き明かして終わる推理小説とは一味違うミステリだった。

 ところで、あとから作者の経歴を確認したら、乱歩賞を受賞してデビューしていた。作者名にも全く記憶がなかったが、最近の乱歩賞受賞作を確認したらなぜか呉勝浩以降の作者や受賞作を知らなかった。その前年までは(読んでいなくても)作者名や受賞作は知ってたのだが。

スワン

スワン

  • 作者:呉 勝浩
  • 発売日: 2019/10/31
  • メディア: 単行本