痛み

 レオは梯子を降りはじめた。梯子の横桟は氷のように冷たく、素手で握ると皮膚が鉄に貼りついた。一段降りるごとに皮が裂けはじめた。(中略)レオは歯を食いしばって痛みをこらえた。手のひらの皮のあちこちが裂けて血が出てきた。目からは涙が出た。下を見て、残りの高さを目算した。まだ飛び降りるには高すぎる。降りつづけるしかない。皮の剝がれた手のひらで凍った鉄をつかむしかない。レオはあまりの痛さに叫び声をあげ、梯子から手を放した。

『グラーグ57』上(トム・ロブ・スミス 田口俊樹訳 新潮文庫)p.166

グラーグ57〈下〉 (新潮文庫)

グラーグ57〈下〉 (新潮文庫)