『美しき愚かものたちのタブロー』原田マハ
『美しき愚かものたちのタブロー』を読む。
久しぶりの原田マハ作品。松方コレクションと国立西洋美術館の成立の背景を描く史実に基づくフィクション。さすが美術テーマの原田マハ作品は読み応えある。
主人公の田代雄一はモデルは存在するが架空の人物らしい。名前からもわかるように、モデルは実際に田代と同じように松方幸次郎に作品の購入のアドヴァイスをし、フランスとのコレクションの返還交渉にもあたった矢代幸雄だろう。「アルルの部屋」購入のエピソードなども一致するが、あえて架空の人物にしたのは、松方コレクションに関わった人々の熱意を見てきたかのように描くためだろう。
対して実名で登場する日置釭三郎のエピソードはフィクションを差し引いたとしても、戦争中に松方コレクションを守り抜いたのは歴史的事実で、守り抜くためには小説に書かれていたような出来事もあれば、それ以上に大変なこともあったかもしれない。それを思うだけでざわざわする。