引越

 それと、患者本人と周囲のユーモア感覚は、闘病には不可欠だ。私が緊急入院して、病院から友人のケンに電話を入れたときの会話。
「おはようございます。スローン・ケッタリング記念病院の六三五号室から、朝の挨拶です」
「あれ? アパートが気に入らなくて引っ越しちゃったの?」
 いつもふざけた話しかたばかりしているわけではないが、深刻な事態が発生したときに、とっさに笑いを会話の中に入れることのできる人は、すばらしい。

『ニューヨークでがんと生きる』(千葉敦子 ニューヨークでがんと生きる)p.155