どんな理由で2次方程式を解くのか?

 読者諸兄に納得のいく説明はできないかもしれないが、このあたりで本質的な疑問を取りあげておく必要があろう。つまり、”いったい全体、どんな理由で2次方程式を解くのか?”という疑問のことだ。
 こういう疑問自体、問われてしごく当然のものだが、その答えとなると、数学者によって十人十色だと思う。わたしのように、応用数学者としておもに機会システムの安定性を研究している立場からは、少なくともこうは言える。課題に取り組んでいると、最終的に2次方程式を解く問題になることが数えきれないほどあるからだ、と。

『数学はインドのロープ魔術を解く』(デイヴィッド・アチェソン ハヤカワ文庫)p.47