「仔犬契約法」

 ちなみに、この作戦は、「仔犬契約法」(Puppy Dog Close)と呼ばれる心理テクニックの一種であると思われる。
 仔犬契約法とは、「とりあえず、この仔犬をおかせてもらいます。お邪魔なようでしたら、1週間後に引き取りにきます」といって仔犬をおいていくと、たいていの人は仔犬を世話しているうちに愛着が湧いてくるので、1週間後にも業者に返すことなく、そのまま購入してくれる、という販売法からつけられた名前である。
 仔犬をおいていくのは、一時的に見ると、自分がソンをしている。大切な商品を、お金も回収せずにおいてきてしまうわけだから。しかし、最初からいきなり「仔犬を買ってくれ」では、お客も買ってくれない。だから、最初は自分がソンをするのを覚悟するのである。そうやって信頼を得れば、その後の展開はスムーズにいく。

『「人たらし」のブラック交渉術』(内藤諠人 大和書房)p.29