手塚治虫と星新一

 手塚は「鉄腕アトム」がテレビドラマ化されて大ヒットし、漫画家長者番付ですでにトップという人気作家だったが、この前年に、「宇宙塵」の月例会が編集委員以外にも公開されると、突然参加して同人となった。手塚もまた、新一の話に魅せられたひとりで、新一と語り合ったことは手塚に大きな影響と刺激を与えていく。「鉄腕アトム」のアニメ用の原作を考えてほしいと虫プロの担当者がやってきたときなど、新一の第一声にみな驚いて、のけぞった。
「アトムとウランちゃんの近親相姦ビデオを作ったらどうかな。合わせて二十万馬力だ」
漫画読本」などに掲載されたこのころの手塚の漫画には、しばしば新一や小松らSF作家が実名で登場し、昭和四十年から「週刊少年サンデー」に連載された「ワンダースリー」の主人公は、新一にちなんで「星真一」と名づけられている。

星新一 一〇〇一話をつくった人』(最相 葉月 新潮社)p.310