ミステリなんか退屈だ

 もちろんわたしはひどいことをしている。話の結末を台無しにしているのだから。本全体のみならず、この章の結末までもを。わたしはあなたにふたつの出来事を前もって教えてしまった。ミステリに仕立てていくことに興味がないのだ。ミステリなんか退屈だ。わたしは何が起こったかを知っているし、あなたもそうだというわけだ。わたしをいらいらさせ、困惑させ、興味をもたせ、びっくり仰天させるのは、何があってそんな結果になったかというとだ。

『本泥棒』(マークース・ズーサック 早川書房 p.303)