アメリカの雑誌の短編小説のエクリチュールを日本にもってきた人

「星さんはある種の、芥川龍之介なんですよ。芥川の場合は中国の古典を取り入れましたけど、星さんの場合はアメリカ文化のフレンドリーさとスノビズムを導入した。ぼくが読み始めたころの星新一はもう、才気突っ走るって感じでピカピカ輝いていた。なんといっても言葉遣いが新しいでしょう。誰でも書けそうだと思って真似して挑戦してみるけど、何本も書けないことはすぐにわかるんだよね。つまり、星新一アメリカの雑誌の短編小説のエクリチュール(文体)を日本にもってきた人。SF作家というよりも、新しい文化とスタイルを輸入した人です。ぼくたちは、植草甚一と並んで認識していましたね。カリスマ性がありました。ぼくたちの先生です」

星新一 一〇〇一話をつくった人』p.276 荒俣宏の言葉