世界のすべて

 自分の観察以外に頼れるものなんてないはずだ。自分が受け止めたもの、それが世界のすべて、現実のすべてじゃないか。

トーマの心臓』(森博嗣 メディアファクトリー)p.243

天使

「待って。もうひとつだけ訊かせて」
 君はまるでコロンボみたいだと少女は言って、どこかへ翻しかけた動作を中断させる。ターンの先でもあのオンボロ刑事の伝説が生き残っていることを僕は知る。まあもとは天使だったというのだから、そういうこともあるのかも知れない。

『Boy's Surface』(円城塔 早川書房)p.245

Boy’s Surface

Boy’s Surface

朝というのは、あらゆる感情をことごとく幻滅させてしまう、どんな思考もすべて打ち砕いてしまう、暴君の時間なのだ。

トーマの心臓』(森博嗣 メディアファクトリー)p.8

悪口

「ネットで、おまえの悪口を時々、見るけど」
「悪口はネットで言うのがマナーなんだって」

『モダンタイムス』(伊坂幸太郎 講談社)p.146

モダンタイムス(下) (講談社文庫)

モダンタイムス(下) (講談社文庫)

勇気

「『地獄の警備員』って知ってます?」工藤がぼそっと言う。「やっぱり、二十世紀の映画らしいんですけどね、五反田さん、それをやけに気にいっていたんですよ。元力士の警備員が人を殺し回る話みたいですけど。その怖い警備員が言うらしくて」
「『おまえを殺す』とか?」
「『それを知るには勇気がいるぞ』とか言うんですって。『俺を理解するには勇気がいるぞ』とか」

『モダンタイムス』(伊坂幸太郎 講談社)p.86

モダンタイムス(上) (講談社文庫)

モダンタイムス(上) (講談社文庫)

画期的

「俺の家の近くの回転寿司は、わさびも回転させるっていうんで、画期的、って謳ってたぞ。画期的というのは、言ったもんがちだ」

『モダンタイムス』(伊坂幸太郎 講談社)p.22

モダンタイムス(上) (講談社文庫)

モダンタイムス(上) (講談社文庫)