大型旅客機

一九七〇年代のはじめ、大型旅客機ボーイング727は運行を開始したばかりで、それは今日われわれが知っているような家畜運搬車ではなかった。

『遥かなる航跡』(リシャール・コラス 集英社文庫)p.81

遥かなる航跡 (集英社文庫)

遥かなる航跡 (集英社文庫)

就業規則

会社の就業規則というのはだいたいが過失をしないように書かれているものが多いから、守るのが面倒臭い。だから最大限に拡大解釈することがうまくやっていくコツでもある。今は知らないが、かつてのソニー就業規則に”酒気を帯びて構内に入ってはならない”というのがあったが、構内を出てはいけないとは書いてないから職場で酒を飲んで帰ったことがある。立入禁止なら四つん這いならいいのかというような低次元の駄洒落的解釈だが、こんなことが意外に社内の活性化を生むのである。

『ビジネスマンのための「個性」育成術』(黒木康夫 生活人新書 NHK出版)p.24

満場一致を是とするのは不純

かつて盛田は満場一致で議決されるものぐらい不純なものはないと言った。誰もが反対しないものは決して常識の域を出ないものだし、それを是とする人の動機は不純であると考えていた。

『ビジネスマンのための「個性」育成術』(黒木康夫 生活人新書 NHK出版)p.28

戦争がなくならないのは

戦争がなくならないのは若者も年寄りもみんなそれが好きだからだ。戦った者も戦わなかった者も。

『ブラッド・メリディアン』(コーマック・マッカーシー 黒原敏行訳 早川書房)p.316

ブラッド・メリディアン

ブラッド・メリディアン

痛み

 レオは梯子を降りはじめた。梯子の横桟は氷のように冷たく、素手で握ると皮膚が鉄に貼りついた。一段降りるごとに皮が裂けはじめた。(中略)レオは歯を食いしばって痛みをこらえた。手のひらの皮のあちこちが裂けて血が出てきた。目からは涙が出た。下を見て、残りの高さを目算した。まだ飛び降りるには高すぎる。降りつづけるしかない。皮の剝がれた手のひらで凍った鉄をつかむしかない。レオはあまりの痛さに叫び声をあげ、梯子から手を放した。

『グラーグ57』上(トム・ロブ・スミス 田口俊樹訳 新潮文庫)p.166

グラーグ57〈下〉 (新潮文庫)

グラーグ57〈下〉 (新潮文庫)

 書いていて涙が止まりません。私は本物の作家ではないのです。本物の作家というのは泣いたりしません。

『通訳ダニエル・シュタイン』下(リュドミラ・ウリツカヤ 前田和泉訳 新潮社)p.313

人種

 だが世の中には、被尋問者の言葉一つひとつの裏づけを取らなくては気がすまない人種もいれば、家に帰るとき、歩道の敷石の隙間を踏まないように歩かなくては気がすまない人種だっている。

『スリーピング・ドール』(ジェフリー・ディーヴァー 文藝春秋)p.300

スリーピング・ドール

スリーピング・ドール